写真を撮る時は笑顔を作れるだろうか。
人にニコっと微笑みかけられるだろうか。
私は、口角を上げるのがなんだか気持ち悪くて、口を横に引っ張る感じにして、無表情の自分を何とかしている。
シャッターを押す時に言う「はいチーズ」は、「チー」がそういうことだから。「ズ」をしっかり発音してしまう日本では意味が無い。だから「1+1は?」って言う人が出てきた。
2(にー)ってね。私も笑顔を作らなきゃならない場合には、口を横に引っ張って「い」って言いそうな口にして乗り切っている。
笑顔を作るのは難しい。大変。疲れる。作り笑いは悲しい。本当の笑顔をしていたい。
けど、面白いことがあるわけじゃない時に笑わなきゃいけない場合は作り笑いをするしかない。
「あのお客さんは私に嬉しそうな笑顔を向けてくれた。いいな~、なんであんな表情ができるんだろう?」
接客業だと、笑顔って大事だ。
接客業じゃなくても、人と顔を合わせる時に、笑顔、ほほえみは大事。
友達とどこかで待ち合わせしたとする。向こうからやって来た友達。ニコっとしながら「あ!いた~」みたいな、ね。
私には出来ない。出来ないっていうか、しない、やらない。
面白くも無いのに笑えるか~!!!
面白かったら笑う。
何も面白くないのに、笑いたくない。
私は人に接する時に笑顔を作りたくない。私は笑わないが、私に接した人がニコってしてくれると優しい空気に包まれて、それは好き。
自分勝手!(^◇^)
たまに、常に笑顔の人がいる。その人はいったいどうなってるんだろうか。
そういう人、尊敬する。
前に、買い物で服屋に入った時に女性の店員の人が寄ってきた。「手に取って広げて見てくださいね~。」と声を掛けてくれた。その表情にビックリした。
大笑いしてる時の顔だったのだ。ニコっとしすぎ!
目尻どころかほっぺたまで笑いじわが出来てて、目が横に細くなって閉じたみたいになってて。
だ~っはっは~!!とお腹を抱えて笑ってなきゃ、その表情、辻褄が合わないだろうって思った。
そんな表情で言ってることが接客の声で「手に取って広げて見てくださいね~。」なのである。
私は普段、人の顔を見れない。うつむき加減でいた。その店員の人は小柄だった。だからその人が視界に入っちゃった。で、その表情が衝撃で、私は固まってしまった。
きっとこの店員の人は鏡の前で笑顔の練習をしているんだろうな。いや、でも、鏡を見て練習してるなら、その笑顔はボツになるはずだ。笑いすぎてるから。その笑顔を接客に使用しているということは、練習してないのかも。
そんなことをグルグル考えていて、店員の人の顔を見続けていた。爆笑顔を前にすると人見知りがどっか飛んでいってしまうようだ。
何も面白いことが無いのに、言っちゃえば化粧と同じような感じで笑顔を作って、人と接している。
笑っている顔を作る人は正直な人ではない、って印象があった。ウソつきというか。
店員の人なら、そりゃお客さんに商品を買ってほしいわけだから、笑顔のウソをついて、愛想よくにこやかに近づいてくるわな。
その笑顔にこっちは警戒心の固まり。
そんな私だが、あれ!?と思うことが起こった。
何年か前のこと。私が店員側だった時。
50代くらいの小太りで小柄なおばさんがお客さんでやって来た。
私は接客しているのに無表情で「いらっしゃいませ」と言ったら、そのお客さんが近づいて来た。ニコっと優しい笑顔で。
店について質問されて、答えたら帰って行った。それは別に普通のことなんだけど。
笑顔が衝撃で。
あ、さっきとは別の衝撃。(^◇^)
その笑顔がすごくて。「この人は、私に会えて嬉しいんだ。」と思う笑顔なのだ。
笑顔を作っているんじゃなくて、嬉しくて笑ってるんじゃないかって思った。
お客さんが私に会えて嬉しいわけない。そりゃそうだ。
でも、近くで見てると、その笑顔がどうやったって嬉しくて笑ってるようにしか見えない。
私も「そんなはずない」と疑って、何度もその笑顔から何かを見つけようとしたけど、見つかるのは、「嬉しそう」ってことだけ。
ニコっと優しくほほ笑んでいる。
貴婦人のほほえみってわけじゃなく、もっと親しみを覚えるような感じの。
私が5歳くらいの子供だったなら、人見知りが激しくても、このおばさんには足に抱きついて、まとわりついて甘えたい、みたいな。
その人が帰った後、「あの人に良いことがいっぱい起こりますように」という訳の分からない祈りを捧げた。
いや、こうして記事を書いてる今、何年も経ってるけれども、思い出しながらまた祈っちゃった。
祈った直後「こんなことを私が祈らなくても、ああいう人に対してはみんな優しく接するだろうから良いことが起こるに決まってる。だから祈らなくても大丈夫なんだ。」とも思った。あの時も。
で、あの笑顔はいったいどういうことなんだってずっと考えてた。
初対面の私へのあの笑顔。人と会えて嬉しいっていうあの笑顔。
あのお客さんは人が好きってことなのかな。だから人と会うと嬉しくてニコニコしちゃう。
でも、人と会えたからって、嬉しいのか?嬉しいからって、あんなに優しく純粋な笑顔になれるのか?
私と正反対すぎて、どういうことなのか分からない。
私の身に何か嬉しいことが起きた時でも、あんなふうな笑顔が私に出来るだろうか。たぶん笑わない。「ありがたいな~」と真顔で喜びを噛みしめる。私の場合、笑うのは、やっぱり面白い時くらいなのかも。
あのお客さんの笑顔がすごすぎて、なんであんな笑顔だったのか知りたくて仕方なくなった。もう本人に会うこともなく聞けない。会ったとして、人見知りの私が聞けるはずもない。
年の功ってことで、お母さんに聞いてみた。
「店員の私よりも愛想よく笑うお客さんがいた。私の方が接客してもらってる感じだった。人と会って嬉しい、人間好きな人なのかな?」って。
「そういう人なんじゃない?人と会っても無表情の人もいるし、その逆の人がいてもおかしくない。」
お母さんの答えが、私の心に響きましてね。
私が無表情なのと同じ感じで、あの人は笑顔なのかもなって。
笑顔が大変な私の逆で、あのお客さんは無表情が大変なのかもしれない。
私→うわ!人が来た、嫌だな~。
お客さん→あら!人がいる、嬉しいな~。
反射的なのは同じで、その内容が真逆。それだけのことなのかもなって。
嬉しそうに笑えるのは、そういう人だから。
笑顔に込められた隠された要求。なんのメリットがあって、笑顔で私と接したのだろう。
お客さんは普通の質問をしただけなので。
あの笑顔を向けられた私は、そのニコっとした顔を素直に受け取るしかない。どう考えても、私に笑いかけることでお客さんが得をすることが何もないから。それでも笑ってたんだから。
笑顔を向けられることに不信感を抱くのは、その笑顔の意味には、ろくなことがないから。なんかこの人ニコニコしてるな~と思ったら、実は私に対してイタズラを仕掛けていた、とか。ニコってしながら話してくるな~と思ったら、無理難題を頼むためだったとか。
それに私にとって笑顔とは、ものすごくパワーを使うことだから。
店員が笑顔なのは、店長に「笑顔で接客しろ!」って怒られたからとか、お金をもらってるし仕事だからとか。
あのお客さんが商品を買ったんだったら、割引してもらいたいから笑顔でいたとか考えられるんだけれど。
私に笑顔を向けても意味ないのにな~。
他に理由が考えつかないから、私の中では「そういう人だから。」という結論に達した。
まだまだ考察は続く。